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   ● 【ライトノベル】吾輩は猫になっちゃった(仮 第15話
   ● 【ライトノベル】吾輩は猫になっちゃった(仮 第14話
   ● 【ライトノベル】吾輩は猫になっちゃった(仮 第13話
   ● 【ライトノベル】吾輩は猫になっちゃった(仮 第10話
   ● 【ライトノベル】吾輩は猫になっちゃった(仮 第9話


【ライトノベル】吾輩は猫になっちゃった(仮 第15話

<<これまでのお話>>

はじめに


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第11話><第12話><第13話><第14話



<<第15話>>


「この子の名前はココアです。雄です。サクラちゃんが育ててるのですが、サクラちゃんは過去に避妊手術をしているので、どこかの猫が産んだ子の母親代わりをしているんでしょうね。」

綾んさんは白髪眼鏡先生の問いに淡々と答えた。

「えええええええええええええ!!」

僕は愕然としながらもママの方を振り返るが、ママは聞こえていないのか、それとも聞いていないのか、はたまた聞こえているけれども聞こえていないフリをしているのか、採血されたところを一生懸命舐めている。

「子猫1匹って言うのも珍しいからねぇ。」

と白髪眼鏡先生は言う。

「え?僕…。ママの子じゃないの!?」

話が唐突すぎて僕はわけがわからなくなって、呆然としたまま診断を受けた。

「体重は…680グラムね。」

「歯は乳歯がもう生えそろってるね。体重と歯の感じから見ると生後67週目ってところかなぁ。」

途中まで僕は完全に思考停止状態だった。
 

しかし先生の次の一言で一瞬にして我に返る。

「じゃ採血しようか。小さいから首からね。」

「はい、先生。」
「え!?」

綾さんは僕を診察台に横向けに寝せて右手で僕の手足を固定し、さらに左手で喉元を伸ばすように首を固定した。先生は僕の喉元をアルコール消毒して、血管を探しているのか毛を掻き分けている。

「ちょっ!ちょっ!待って!え?ええ?首から取るの?マジ!?ウソでしょ!」

抵抗しようともがきたいのだが、体も頭も綾さんにがっちりホールドされて動けない。
そして何も見えないのを良いことにブスッ!と躊躇なく首に注射器の針が刺さる。超痛い。
しばらくして針が抜かれる。

「痛いよ!超痛いよ!なんだよもぅ!刺す前に『ごめんなさいねー。ちょっとチクっとしますよー。』とか普通言うだろ!」

と涙目になっていると、さらに間髪入れずに先生が言う。

「じゃ、ワクチンも打っとこうか。」

男性の助手が今度は注射器とワクチンらしき容器を持ってくるのがわかる。

「ちょっと!先生!バカじゃないのマジで!って、ちょっ!やめっ!ああっ!」

ブスッ!今度は容赦なく足に注射される。

針が刺さる痛みとともに熱いものが体に流れ込んでくるのがわかる。

「はい終了。」

綾さんが

「頑張ったね!よしよし。」

と言いながら、ワクチンを打ったところを撫でてくれるのだが、ちっとも嬉しくない。
嬉しくないどころか、僕は綾さんの冷徹というか事務的というかその慣れた手つきに逆に怒りのようなものを感じていた。

 

きっとあの衝撃的な会話からものの数分の出来事だったのだが、僕はもう完全にぐったりとしていた。

頭は混乱していたし、痛い思いを2回もしたし、ワクチンのせいもあるのかもしれない。

そんなぐったりした僕はママのいるキャリーケースに戻された。
ママが「坊や、よく頑張ったわね。えらいわよ。」と言って体を舐められて慰めてくれたのだが、僕は痛みと怒りと衝撃に耐え切れず目を閉じてそのまま眠ってしまった。

 

「サクラちゃん、ココアくん、ごはんよ。」

という綾さんの声に目を覚ます。

どれくらい寝ていたのだろうか、よくわからないのだが僕はキャリーケースの中で目を覚ました。ママも隣で寝ていた。
キャリーケースの中にママと僕のごはんとお水の器が置いてある。

「ここはどこ…。」

見回してみると、そこはまるで監獄のようなところだった。

向かいにある鉄格子の4列3段の檻の中に点滴を打たれたり、ぐったりした猫たちがところどころに苦しそうに収まっている。

「痛いよぉ。早く帰りたいよぉ。」

と泣いているキジトラ猫や

「ママ…。ママ…。」

と悲しそうにつぶやく三毛猫。

「キュー。キュー。」

と苦しそうな呼吸をしているシャム猫など様々な猫がいた。

見ているだけで痛々しくて、この場から早く立ち去りたい気持ちでいっぱいだった。


そんなこともあってなのか、それともワクチンのせいで気持ち悪いからなのか、僕は食欲が無くてごはんを一口も食べれなかった。

聞くまい、見まいとして目をつむり、ママの懐に潜って僕はとにかく寝ようとした。

そして、眠りに落ちて夢を見たのか、僕は猫神様を見た。

「お前にチャンスをやる。お前にこれから肉体と試練を授ける。猶予は1年間。お前はそこで魂を磨きまくれ。」

と猫神様に言われたところで、ハッ!と目を覚ました。

「そうだ…。僕は逃げちゃいけないんだ。魂を磨くためにこの体をもらったんだ。いつもいつも逃げて逃げて楽な方、楽な方を選んできたけど、僕は誰かのために生きなくちゃいけないんだ。」

そう思った瞬間。なんだか体の奥から底知れぬパワーが湧いてくるような気がした。

 

僕は寝ているママの懐から抜け出して、とりあえずみんなに声をかけてみることにした。

「ねぇ、僕ココアって言うんだけど、君は?」

すると、先ほどまで痛い痛いと泣いていたキジトラ猫が言う。

「ココア君?僕はね。チョコ。面白いね。えへへ。」

僕と同じくらいの大きさのチョコは1人でちょっと心細かったのかもしれない。

鉄格子の檻は隣が壁になっていて見えないためにお隣同士で話せないのもあるのだろう。
話し相手が出来て、ホッとした感じの顔をしている。

「どうしたの?」

と聞くと

「あのね。僕ね。足をね。怪我したの。見て。これ。」

と言って、包帯の巻いてある足を見せてくる。

「大丈夫だよ、あの白髪眼鏡すんごいから!すぐに治っちゃうよ!」

と慰める。あの先生がすんごいのかどうかは知らないけども、綾さんが『先生』と言うからにはすんごいに違いない。きっとそうだ。

しかも注射は結構痛かったけど手際がむちゃくちゃ良かったし。

「うん。早く帰りたい。でね。カシャブンでね。いっぱい遊ぶの!」

チョコはちょっと楽しそうな顔をした。

「うん!いっぱい遊べるようになるよ!だから元気出してね!」

「うん!」

チョコはちょっと嬉しそうな顔をしてからやがてスヤスヤと眠りに落ちて行った。

 

僕はチョコの右斜め下段にいる「ママ…。」とずっとつぶやいて泣いている三毛猫にも声をかけた。

「僕はココア。君は?」

すると三毛猫が答える。

「私はミーって言うの。ママに会いたい。ずっとお見舞いに来てくれないの。」

と今度は余計に泣いてしまう。
お見舞いと言うのだから、ママと言うのは人間の飼い主のことなのだろう。

「きっと仕事が忙しいとか、理由があるんだよ。でもね、お見舞いを待ってるんじゃなくて、早く良くなってお家に帰ろうよ!そしたらずっとママと一緒にいられるでしょ?いつまでも泣いてたら全然良くならないよ!」

と言うと、ミーちゃんは

「そうだよね。早くお家に帰りたいもん。早く良くならなきゃね!」

と言って顔をグルーミングするように涙を拭ってその手を舐めた。

「うん。その意気、その意気!僕もね、今日はじめて採血してワクチン打って、ちょっと気持ち悪いけどほら!この通り!」

とダンスを踊って見せる。

「あはははは!ココアくん、ダンス面白い!」

と笑ってくれる。笑っているミーちゃんを見ていると、何事も無かったかのような気がしてくる。
『笑顔が何よりの薬』だとこの時実感した。

 

こうして僕は声を掛けれるだけ声を掛け、みんなを励ました。

中には「くだらねえ。小僧。わかったような事言いやがって。」と言うような老獪な猫もいたし、全く話も出来ないような重症の猫もいたのだが、最初の時と比べてこの部屋の重々しい空気は全くと言って良いほど変わっていた。何より、みんなが早く良くなってお家に帰ろう。という明るい雰囲気に包まれていた。

そんな雰囲気に満足し、話し疲れ、踊り疲れた僕は急激な眠気に襲われた。
重くなっていく瞼を無理やりにでもこじ開けて、みんなと話し続けようとするが

「坊や。あなた、すごいわ。さすが私の坊やね。お疲れさまでした。」

といきなり後ろからママに抱き寄せられる。
「見てたの?ママ…。」
「あなたがみんなを励ますところをずっと見てたわよ。」
と顔を舐められる。舐められながら
「そうだ。そういえば僕は本当にママの子なのかな…。」
そう考えていると、僕は知らぬ間にまた眠りに落ちて行くのだった。


次話⇒<第16話


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【ライトノベル】吾輩は猫になっちゃった(仮 第14話

<<これまでのお話>>

はじめに


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<<第14話>>


 綾さんを見送って、僕たちはトイレを済ませると、すぐに押入れの中に戻った。

それはごはんを食べるとすぐに眠くなるからだ。猫というのは本当に良く寝る動物だということを僕は身をもって知った。僕の場合は子猫というのもあるのだろうけれど、ママも結構寝ていたし。

 

夜には綾さんがやってきた。

綾さんの車の音には何か特徴があるのだろうか。ママは綾さんの車とほかの車の音を聞き分けているようで、綾さんが来ると寝ていてもすぐに起きて耳をピクピクさせていた。

「坊や、綾さん来たみたい。ごはんの時間よ。」

と言うと、僕を咥えて押入れから飛び降りる。

 

キャットスルーを潜り抜けると、足湯の方から声がする。

「サクラちゃーん、ココアくーん。」

「こんばんはー。」

「こんばんは!綾さん!」

僕たちはそれに答えながら縦になって足湯の方へと向かう。

綾さんはいつものようにごはんの準備をしている。

ごはんの準備が出来ると、3人で一緒にいただきますをしてからごはんを食べた。
 

僕は相変わらず生もんじゃ。ママは白身の魚と野菜。綾さんはラップに巻いたおにぎりと、タッパーに詰めたブロッコリーやウインナーや唐揚げのようなものを食べている。

3人とも食べているものはバラバラだったが、やはり人で一緒に食べるごはんはとてもおいしかった。

しかし、食べながらも僕は綾さんのことが気になっていた。綾さんは毎朝毎晩、ママや僕にごはんをくれるために来てくれている。いつから綾さんはこの生活になったのだろうか。この近くに住んでいるのだろうか。学校はどうしているのだろうか。

 

そんなことを気にしながらも、僕はごはんを完食し、お皿をキレイにペロペロと舐めた。

「ごちそうさまでした。」

と言ってから僕は、フォークに刺した唐揚げを食べている綾さんの膝の上によじ登る。

「綾さん、今どうしてるの?」

と聞いてみる。すると

「おいしかった?そっか。良かった良かった!」

と言って綾さんに頭を撫でられる。

「いや、そうじゃなくて!綾さんここの近くに住んでるの?」

と再度聞いてみる。

「ん?ココアくん、これ食べたいの?ダメよ、これは塩分も油も多いから。」

綾さんは今度は持っていた半分食べかけの唐揚げを全部頬張った。

うーん、やっぱり僕の言葉は伝わっていないようだ。僕には人間の言葉も猫の言葉もわかるのだけれど、綾さんには猫の言葉はわからないようだ。ちょっともどかしい。

しかし、綾さんの生活となりは、しばらくして判明することになる。

 

数日後の夜。こうして僕たちが綾さんにご飯をもらっていた時だ。

綾さんがこう切り出した。

「ココアくんもそろそろ病院行かないとね。サクラちゃんも定期健診ね。」

「び、病院?いや、あ、あの僕ピンピンしてますけど。」

病院が大嫌いな僕が強がってみせると

「坊や、お病気しないために病院に行くのよ。大丈夫。怖くないから。」

とママに諭される。

 

翌朝、ごはんを食べ終わると、僕とママは綾さんが用意したキャリーケースに入れられて病院に行くことになった。

綾さんは軽自動車の助手席にキャリーケースをシートベルトで固定すると、車のエンジンをかけた。

車の中では浜省の曲が流れていた。

いまどきの女子はEXILEとか三代目J Soul Brothersなどを聞きそうだが、ちょっと男勝りで少しやんちゃなイメージの綾さんに浜省はなんだかぴったりな感じがして少しおかしかった。

 

車に揺られてどれくらい時間が経っただろうか。僕とママは食事をしたおかげで眠っていたが、綾さんの

「着いたわよー。」

という言葉に目を覚ます。

キャリーケースの中からなので、見える景色は限定的だったがそこは雪がありつつも緑豊かな公園のようなところだった。

綾さんの持つキャリーケースに揺られていると、何かの建物の中に入った。

 

そこはまさに病院の待合室。という感じだったが、普通の病院とは少し様子が違った。
それは犬を抱っこしたり、キャリーケースを持った人がいっぱいいたからだ。

これが動物病院か…。キャリーケースの金網状の扉のところから見回すと、ぐったりして辛そうにしている大型犬や、キャリーケースの中で興奮して背中の毛をそば立てて「病院やだよ!帰ろうよ!」と言って暴れている猫、ぐっすり眠って夢見心地のフェレットの兄弟など色々な動物がいた。
「あなたの猫の方が可愛いわよ。」などとお互いのペットの褒め合いをする奥様連中みたいのもいるが、ほぼ一様に飼主さんは不安げな顔をして自分のペットに「大丈夫だからね。」などと声をかけている。
 

キャリーケースの扉のところからそんな様子をかぶりつきで見ていると、綾さんがぬん!と顔を出して

「ちょっと待っててね。」

と言って、廊下の方へ消えて行った。

「うおー。超不安なんですけど。綾さーん!」と心の中で叫んでいると、しばらくして綾さんが白衣を着て現れた。

髪の毛を後ろで縛って、表情もキリっとして先ほどまでの生活感のある綾さんとはまるで別人だった。

綾さんはキャリーケースを持ち上げると膝の上に置いた。


さらにしばらくすると、受付から声がかかる。

「ハヤミさーん。」

「はーい。」

綾さんが立ち上がるのと同時にキャリーケースが持ちあがる。
綾さんの苗字はハヤミなんだな。という思考よりも、ついに僕らの番か…。というのが先だった。


診察室に入ると、そこは人間の病院とは少し違っていた。

先生のデスクやパソコンやレントゲン写真を差すやつとか、患者さんというか飼主さんの座る椅子という感じはそのままなのだが、その奥にいきなり手術台のようなものが見える。
その物々しさに怯えていると、ママが

「大丈夫よ。」

と言って舐めてくれるのだが、全然だいじょばない!(=全然大丈夫じゃない!)見たこともない器具や機械がいっぱい目に入ってくる。


すると、まずママがキャリーケースから綾さんに抱き上げられて、診察を受ける。

「サクラちゃんだね。」

と白髪で眼鏡の先生がカルテのようなものを見てから

「じゃ診察台へ。」

と言って綾さんを促す。

ママは籠の乗った体重計にのせられて体重を計った後、今度は手術台みたいな緑色の台に乗せられて、聴診器を当てられたり、体中を触診されたり、口をいじられて歯の様子を見られたりしている。

綾さんがその都度、ママの体位を変えたりしている。とても慣れた手つきだ。

「うん。なるほど。じゃぁ採血。」

と白髪眼鏡先生が言うと、綾さんは今度は奥から注射器を持ってきた。助手らしき若い男性も1人いるのだが、その男性を差し置いて綾さんはテキパキと作業した。綾さんはここで研修でもしているのだろうか。

ママが診察台の上で綾さんのされるが儘にしていると、白髪眼鏡先生がママの右腕に注射器をブスッと指して採血をした。思わず目を逸らす。なんだか自分がされているようで体がむずむずする。しかし採血はあっという間に終わった。

「結果はまた明日でいいかな?」

「はい、先生。」

そう言うと綾さんに抱かれてママがキャリーケースに戻される。

「ママ、痛くなかった?」

と聞く間もなく、今度は僕がママと入れ替わりにサッと取り上げられる。

「ちょ、ちょっ、ま…って。」

否応なく綾さんは僕を抱き抱えて飼い主さんの席に座った。

白髪眼鏡先生が

「この子は?」

と聞くと、綾さんがそれに答えるのだが、その内容が衝撃的すぎて僕の思考は一旦停止することになる。



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【ライトノベル】吾輩は猫になっちゃった(仮 第13話

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<<第13話>>


 翌朝、やはりママに起こされる。

「坊や起きて。」

「ん…。うん…。」

眠くて全然瞼が開かない。瞼が開かないどころか体も思うように動かない。

人間の時も寝坊助だったけども、子猫になった僕にとって朝起きるということは本当に苦手なことになっていた。

ママはそんな僕を見越してか、寝ぼけた僕を咥えて、キャットスルーへと向かう。

キャットスルーの手前で降ろされると

「さぁ、ごはんよ。起きなさい。」

と僕の顔を舐めてくる。それがものすごく心地よいのだが、勝手口の土間の冷たさもあって、急に目がシャッキリしてくる。

「行きましょう。」

ママがキャットスルーを潜り抜ける。

「待ってよ、ママ。」

僕も後に続く。

 

朝早いのだろうか。外はやはり寒いのだが、快晴で日光が雪に反射して眩しいくらいだ。小鳥たちが太陽を祝福するかのように鳴いている。

僕たちは昨晩と同じコースで足湯へと向かった。

すでに綾さんが足湯の付近でごはんの支度をしているのが見える。

「サクラちゃーん。」

用意が出来たのか綾さんが呼ぶと、ママも答える。

「おはようございまーす。」

僕たちは小走りで足湯へと向かった。

 

綾さんは足湯のベンチに僕たちのごはんや水を据えると僕たちを迎えてくれた。

「綾さんおはよう!」

ベンチによじ登ると

「おはよう。サクラちゃん、赤ちゃん。赤ちゃんのごはんはこっちね。」

と言って、ごはんの器を二つ差し出す。ママとは別に今日は僕専用の器があった。

「ありがとう。綾さん。」

僕とママは

「いただきます。」

と言ってから並んでごはんを食べることにした。
 

ママの、「これはお肉で、これはニンジンですよ!」という見た目丸わかりの少しゴツゴツとしたごはんに比べ、僕のごはんは離乳食だからなのか、ミキサーにかけた感じのドロッとしたごはんだ。まるでまだ焼けてない生のもんじゃ焼きみたいな感じ。全体的に茶色いのだが、ところどころに緑色やオレンジ色のものがある。

恐らくお肉やニンジンや緑黄色野菜などをミキサーにかけているのだろう。僕はニンジンが嫌いだったのだが、とりあえずペロっとひとくち食べてみると、思いのほかおいしい!北海道のニンジンは抜群にうまいのかもしれない。僕は生もんじゃを不器用な舌でペロペロと食べていった。ママはとなりで

「綾さんの作るごはんは本当においしいわ。」

と言いながら、時折目をつむりながら本当においしそうに食べている。

綾さんは足湯に浸かりながらトートバッグから水筒を取り出し、湯気の出る甘い香りのする飲み物を飲み、菓子パンのようなものとバナナを頬張りながら僕たちをあの笑顔で見守っていた。

 

とても幸せであったいかい時間だった。

家族団らん。と言うのだろうか。みんなで一緒に笑顔で楽しく取る食事。とても久しぶりな気がする。

人間のとき、最後に家族で団らんしたのはいつだろうか。

そんなことを考えて、しばらくごはんを食べるのも忘れて僕はボケ―っと口を開けてママと綾さんの顔を見ていた。

「赤ちゃんのお口には合わなかったかな?」

と綾さんが言う。ママも

「坊や、このごはんキライ?」

と聞いてくるので

「いや、すんごくおいしいよ!これ!」

と我に返ってごはんをガッツガツ食べた。

とても素朴で、とても原始的だけれども、こんなところに幸せってあるんだな。などと思っていると、何故だか涙がこみ上げてきたが、僕はそれを振り切って忘れるように夢中でごはんを食べた。

 

気が付くと、僕は「これ以上舐めるところありませんよ!」というくらいに器をペロペロと舐めてキレイにしていた。子供の頃、よくお皿を舐めると「お行儀が悪いわよ!」と母ちゃんに怒られたものだが、僕的にはそれは「汁一滴までおいしいです!」の現れでもあった。犬や猫にはこれが許されるのだから、なんだか嬉しいような。

「赤ちゃんには足りなかったかしら。」

綾さんが言うので

「うん。もっと食べたいな。超おいしかったよ。ごちそうさまでした。」

と頭を下げてお礼をすると、綾さんに突然抱き上げられた。
 

また鼻キスをされるのかと思ってドキドキしていると、綾さんは僕を膝の上に仰向けにして載せて僕の股間をおもむろに左手でガバッ!と開いた。

「え?綾さん!な、何すんの…。」

ママに助けを求めようと、ママの方をチラッと見るも、ママはお水を飲んでこちらに背中を向けている。ほぼ無抵抗な僕はされるが儘だ。

「男の子ね!」

と言って綾さんはウンウンと頷きながら納得した顔をしている。股間を見られた恥ずかしさで僕が赤面していると綾さんはそれを知ってか知らぬか

「名前考えなきゃね。」

と言って僕を開放した。


ママは食事を終えて、お水を飲んでからこちらに近寄ってきて、綾さんの膝の上に乗った。

僕は綾さんの左膝、右の膝にはママ。

綾さんは両手でそれぞれ僕たちの頭から背中をやさしく撫でながら思案している。

やがて

「そうね…。」

と言ってから、綾さんは一度天を仰ぎ、その後飲みかけの水筒のコップを見てから言った。

「ココアってどう?可愛くない?」

ママに向かって尋ねる。

「いいですね!ココア。」

ママが答えると

「決まり!君は今日からココアだ!」

と言って僕を再び抱き上げて、いきなり鼻キスをした。

 

命名「ココア」

 

こうして僕は創太改めココアとしてしばらくの間、生きて行くことになる。



次話⇒<第14話



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【ライトノベル】吾輩は猫になっちゃった(仮 第10話

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<<第10話>>


 ママが僕を咥えたまま部屋を出ると、そこには黒光りした板の廊下があった。

左隣に一部屋、向かいに2部屋ほどあるようだが、どれも扉が閉まっていて猫が入れる様子ではない。

ママは部屋を出て左側に向かうと、突き当りにある階段を僕を咥えたまま降り始めた。

どうやら僕たちがいた部屋は2階の角部屋にある寝室?のようだった。

 

1階に着くと、向かいに擦りガラスの障子のような引き戸があり、その隙間から中に入る。

そこはどうやらダイニングキッチンのようだった。

大きなテーブルがあり、椅子が4脚置かれていた。

ママは僕を咥えたまま、テーブルの上にジャンプし、テーブルの上に僕をゆっくりと下した。

「ここがおじいさんの席、おばあさんの席がここ。ママはいつもおばあさんのとなりか、おじいさんやおばあさんの膝の上にいたの。」

と言って、ママは懐かしそうな顔で椅子を眺めていた。

テーブルの向こうにはテレビがあり、それを見ながらおじいさんとおばあさんとママが楽しく歓談している様子が目に浮かぶ。

「テーブルの上はね、登ると怒られちゃうから登ったこと、あんまりないのだけれど。」

とママは申し訳なさそうに言う。

 

奥には大きなキッチンがあった。

一般家庭の倍以上はあるかというくらいの少し大げさなキッチンだ。

ここはお料理屋さんか何かなのかな…。

ママが僕を再び咥えて、テーブルから降りて、キッチンの方へ向かった。

「いつもここで大勢の人間のごはんを作っていたわ。」

「おじいさんとおばあさん以外の人間のごはんを?」

「そうよ。あるときからは、人間が少なくなって、おじいさんとおばあさんだけになったのだけれど。」

 

キッチンの右角には勝手口があった。

「ママはよくここでごはんを食べていたのよ。」

勝手口には、ビニールのマットが敷かれていて、そこにお盆が置いてある。

ここに餌や水の器を置いたのだろう。
 

そして勝手口の扉には小さい猫用の扉が付いていた。後から知るのだが、これはキャットスルーというやつで、猫や犬が扉を施錠していてもいつでも出入りできる動物用のドアだ。

「ここからお外に出られるのよ。でも坊やはまだ出ちゃだめよ。外は寒いし危険だから。」

「はい…。」

ママは僕を咥えると、今度はシンクに飛び乗った。

シンクでは、蛇口からチョロチョロと水が出ている。

「蛇口を閉め忘れたまま誰もいなくなっちゃったのかなぁ…。」

そう思っていると、ママが

「これはね、凍らないようにしているのだそうよ。おばあさんが言ってたわ。」

なるほど。良く洗面所の蛇口を閉め忘れると、母ちゃんから、「ここは北海道じゃないんだから!」と怒られた記憶がある。冬、寒い地方では水道管が凍結して破裂しないように水を出しっぱなしにするのだそうだ。
「ママはいつもここでお水を飲んでいるの。坊やも飲むかしら?」

ママは蛇口から糸のように流れ落ちる水を上手に飲んでいたが、僕には難しそうなので、断念した。

 

ママはおいしそうに水を飲んだ後

「さぁ、他の場所にも行ってみる?」

と僕に尋ねた。

「うん。行きたい。」

そう告げると

「じゃあ行くわよ。」

と言って僕はまたママに咥えられた。

ママはシンクから飛び降り、今来た道を戻った。

そしてダイニングキッチンを出て左に向かうと、その先には長い廊下が続いていた。

少し行くと、藍染の暖簾があり、それをくぐると右手に大きく明るい玄関があった。

そこで一旦ママに下ろしてもらう。


しかし大きい。一般家庭ではありえないくらい大きな玄関だ。

靴を横に並べたらゆうに20足くらいは並べられるのではないだろうか。

「ここは料亭とか、そういうお店なのかなぁ。」

と思いつつ、周りを見回す。

両側には大きな下駄箱があり、その上には木彫りの熊の彫刻や、キツネの剥製などが置いてある。

それを見て僕は既視感に襲われた。デジャヴってやつだ。

「この光景…。どこかで見たことがある…。まさか…。」

とっさに僕は玄関を入って正面の壁を見上げる。

それを見て僕は絶句した。

 

壁には「緑雲荘」と掘られた木の看板があった。

「えっ…。な…なんで…。」

緑雲荘は、この前、川で会った、母ちゃんの両親である、じいちゃんとばあちゃんが営んでいた8部屋ほどの温泉旅館だ。

住居兼旅館になっていて、じいちゃんが病に倒れて旅館は廃業し、ばあちゃんは亡くなるまで1人で住んでいた。
僕が小さい頃、何度か家族で来たことがあったし、じいちゃんやばあちゃんの葬儀でも来た事があった。しかしそのときは客室に寝泊りしていたし、食事はお客さん用の大食堂を使っていたので、今の今まで気が付かなかった。

 

それと、じいちゃんとばあちゃんは確か、サクラという名の捨て猫を飼っていて、その猫は看板猫としてお客さんに可愛がられていたはずだ。

「すると、ママは…もしかしてサクラ…なのか…?」

僕たちが遊びに来たときは猫嫌いな父の雰囲気を察してか、サクラが全く近寄って来なかったので、どんな猫だったのかほとんど記憶にない。

…しかしその予想は的中した。

 

緑雲荘の看板の下には「ようこそ!登別温泉へ!」と書かれたプレートがあり、その下に大きなコルクボードがあった。

そこには、色紙に書いた寄せ書きや、写真、はがきなどが所せましと貼られていた。

「緑雲荘さん!ありがとう!」

「旦那さん、おかみさんありがとう!また来ます!」

「お食事がとてもおいしかったです!」

「登別温泉、緑雲荘最高!」

「また来ます!その時はよろしくお願いします!」

など数えきれないくらいのメッセージや、じいちゃん、ばあちゃんと写るお客さんの写真があった。その中には、やはりママの写真が何点もあった。

「サクラちゃん元気でね!」

「来年もいっぱい遊ぼうね!」
「サクラちゃんにいっぱい癒されました!」 

というメッセージとともに写るママの写真。
 

それを見ながら僕は泣いていた。 

そのボードには幸せがいっぱい詰まっているのに、それが壊れてしまった悲しさ。
何も知らず、何も出来なかった、何もしてこなかった自分への悔しさ。
ママがサクラであったことの驚きや、感動。
今まで感じたことのない、色んな感情が渦巻いて、喉の奥が締め付けられるような痛みを伴って、僕は泣いた。
僕の様子を察してか 

「ごめんね坊や。ちょっと怖かったかしら。体も冷えただろうから、戻りましょう。」

と言って、ママは僕を咥えていつもの押入れの中へと帰っていった。

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【ライトノベル】吾輩は猫になっちゃった(仮 第9話

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<<第9話>>


目が覚めたとき、ママはいなかった。

「ママ?」

どこに行ったのだろう。

布団にはまだママの体温が残っていたので、つい今さっきまで隣にいたであろうことがわかる。

「寒い…。」

全身毛に覆われてはいるものの、電気毛布のようなママの体が隣にないと、めちゃくちゃ寒い。よく冬に動物たちが体を寄せ合って寒さを凌ぐシーンをテレビなどで見ることがあるが、その意味が身に染みてわかった。彼らは本能的に寄り添い、温め合っているのだ。

兄弟のいない僕にとって、温め合う仲間がいないというのは致命的なことかもしれない。

「ママ…。どこに行ったのかなぁ。」

光の差し込む隙間の方へ不自由ながらも歩いて行こうとすると、ママがジャンプで飛び込んで来た。

「うおおおおおお!」

一瞬の出来事にびっくりする。

「坊や起きたの?ごめんね、寒かったよね。」

 

ママはいつもの場所に横になる。

良かった。この体では一人では何もできないんだという自覚があったので、正直どうしたら良いのかものすごく不安だったのだ。

「さぁ、おっぱいを飲んで。温めてあげるから。」

おっぱいを飲んでいると、体の中からほんわか暖かくなってくる。

飲み終わると、また暖かい懐に抱き寄せられる。

「ごめんね、寒かったわね。」

「ママ、どこに行ってたの?」

「ごはんを食べて、ちょっとおトイレね。」

「ごはん?」

そうだ、僕はママから母乳をもらっていたが、ママは何を食べていたのだろう。

「そうよ。朝と夜に一度ずつ、ごはんをくれる人がいるの。」

「ごはんをくれる人?」

「そう。人。人間っていう、私たちよりずっと大きくて、頭の良い動物よ。ここも人間の巣なのだけれど、今はもう誰もいないの。」

実は僕もその人間だったんだよ。と言うか悩んだが、ママを驚かせてしまうし、信じてもらえないかもしれない。それに今は言うときではないかもしれないと思ってやめた。
 

「昔はね、人間のやさしいおじいさんとおばあさんが住んでいて、ママと一緒に暮らしていたのよ。けれど、おじいさんが2回前の冬に亡くなって、おばあさんだけになったの。おばあさんは病気だったのだけれど、夏に倒れて、運ばれて、それ以来帰ってこないの。もう天国に行ってしまったのかもしれない。」

ママは寂しそうな顔をして独り言のように言った。涙を流すわけでは無かったが、その目は涙でうるんでいるのがわかる。

「ママ…。」

ママの顔を慰めるように舐める。

「優しい子ね。」

ママに舐め返され、きつく抱きしめられる。

ママの愛情を感じながら、同時に僕は母ちゃんのことを思い出していた。

二人で泣きながら、僕たちはいつの間にか眠っていた。

 

次に目が覚めたときは、昼時なのだろうか。いつもよりも明るく、暖かかった。

僕は寝ているママの懐から抜け出すと、押入れの隙間までたどたどしい足取りで歩いて行った。

隙間から室内を見ると、畳と古びた2棹の箪笥だけの和室がそこにあった。

カーテンは閉まり切っていなかったので、そこから外の光が差し込んでくる。
 

和室は6畳くらいの部屋だと思うが僕には体育館くらいの広さに感じる。そして今立っている押入れの2段目から床までの高さは10メートルくらいある感覚だ。

「やっぱここから落ちたら死ぬかもな…。」

と思っていると

「坊や、起きたの?ちょっとだけお外に行ってみましょうか。」

と背後からママの声が聞こえた。

と同時に後ろから首根っこをママに咥えられて釣り上げられた。
なぜか全く痛みがないのだが、そこを咥えられると力が抜けて動けなくなる。


「あ、あれ…。動けない…。」
と思ったのもつかの間、視界が押入れの2段目から一気に10メートル下の畳へ。

「うわあああああああああ!!」

まさにバンジージャンプ。床スレスレのところで、視界が止まると、やさしく降ろされる。
心の準備もなくいきなり落下したのでちびりそうだった。
 

畳の床は、手のひら足のひら、というか肉球というのが敏感なのか、ひんやりとしていた。
床からの眺めはまた違って、先ほど見ていた箪笥はまるでちょっとしたビルのようだ。

「俺すげー小っちゃくなっちゃったな…。」

そう思いながらも部屋の中を歩いてみる。
すると、今まで暗くてわからなかったのだが、箪笥の向かいに少し埃をかぶった姿見があった。

自分の姿を確かめてみたくて、僕は姿見の前まで歩いていく。

そして僕はとっても小さな小動物に生まれ変わった自分を再確認した。

 

体は全体的に黒くて、手先、足先、しっぽの先、喉からお腹が白。そして僕の顔は耳や目の周りは黒いのだが、おでこのあたりから頬っぺた、あごの下にかけて三角形というかハの字型に白くなっている。ちょうど、色白の人間が髪を真ん中分けしているかのような模様だ。昔こういう顔のキャラクターが書いてある風船ガムを良く買って食べていたのでそれをちょっと思い出していた。

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「しっかし、こうしてみると、自分で言うのもなんだけど、子猫ってのもけっこう可愛いなぁ。」

僕が姿見の前で、360°回転したり、色んなポーズをしてみたり、自分のお尻の穴を見てみたりしているとママが後ろから声をかけてきた。

「坊や、あなたとってもキュートよ。」

なんかこれ、洋服屋さんの試着室みたいだな。
 

「さぁ、じゃぁほかのところにも行ってみるかしら?」

と再びママに首根っこを咥えられてこの後、人間の巣を探検することになるのだが、そこで僕は驚くべき真実を知ることになる。



次話⇒<第10話



※本作品は小説投稿サイト「小説家になろう」に同時投稿しています。
http://ncode.syosetu.com/n2762de/




 

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