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吾輩は猫になっちゃった(仮

   ● 【ライトノベル】吾輩は猫になっちゃった(仮 第18話
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【ライトノベル】吾輩は猫になっちゃった(仮 第18話

<<これまでのお話>>

はじめに


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第16話><第17話


<<第18話>>



僕が見たとてつもないもの。

それは普通ならば見落としてしまいそうな、ちょっとしたものだった。

 

 綾さんのまとめているレポートの内容は現在あの動物病院に入院する猫や犬の診察方法や診断結果、経過をまとめたものだということがなんとなくわかった。

 写真にはあの病院で会話したチョコくんやミーちゃんの写真などもあった。いずれも予後は良好。と書かれていたので一安心したのだが、そこでホッとして視線を落としたその時だ。パソコンの画面の下にあるタスクバー。その右側の時計に何気なく目が行った。

 そこには22:36と表示されていた。

「もう10時半過ぎだよ綾さん…。」

と思ったのも束の間、その下段の日付表示が鮮明に目に飛び込んできたのだ。

2015/3/10。…あぁ。今日はもう310日かぁ。って、ええええええ!!2015年!?」

 僕がヤマジョとカラオケをして、事故を起こし、三途の川に行ったのは忘れもしない、201624日だ。今年のバレンタインは絶対にチョコを貰うんだ。と光一と淳平と色々画策していたことを思い出す。

 日付表示が本当だとすると、僕が以前ママの発言から仮定していた通り、僕は事故から1年前に生まれ変わったことになる。しかも、僕は今日病院で白髪眼鏡先生にだいたい生後67週目と診断された。24日から310日までは34日。5週目いっぱいとなるが、僕が1人でママの母乳を独占して飲みまくって普通の仔猫の平均よりも成長が少し早かったのだとすると、辻褄も合ってくる。

 

 「僕はやっぱり1年前に猫に生まれ変わったんだ…。」

 

 僕に与えられた猶予は1年間と猫神様は言っていたけれど、僕はあの日、24日までに魂を磨けば、もしかしたら元に戻れるのだろうか。今、人間の僕は何をしているのだろうか。淳平や光一とおバカなことをしているんだろうか。そして母ちゃんは1年前と同じように元気にしているのだろうか。色々なことが頭を駆け巡った。

 しかし、何にせよ僕がとにかく魂を磨かない限り、猫神様は上に話を通してくれないということには変わりない。1年間、というかもう残り11か月弱。この姿で魂をどうやって磨けばいいんだろう…。などと考えていたら、鬼のように勉強する綾さんとは対照的にいつものように僕はどっぷりと眠りに落ちて行った。

 

「サクラちゃん、ココアくん。ごはんだよー。」

と綾さんに起こされて目が覚める。

 いつの間にかダンボールベッドの中にいたようだ。僕とママは段ボールから這い出してリビングへと向かう。

テレビの上にある時計は朝の6時を指していた。

「綾さん…。早いよー。」

とつぶやきながら重い瞼をパチパチしながらごはんの前まで歩いていく。

すでにお盆の上に僕らのごはんとお水、こたつの上には綾さんのごはんが並べられていた。

6時と言うことは綾さんはもっと早くから起きて食事の準備をしていたのか…。それとも昨日レポート書いてたし、もしかして寝てないんじゃ…。

 

 そんな心配をしつつ、昨夜と同じように僕らは3人で一緒に食事をした。そして食後、ママとこたつの中で食後のグルーミングをしている時だ。綾さんが食器を片付け終わり、こたつに戻ってきてテレビのスイッチを入れた。そしてニュースの音声が聞こえてきた。

「今日で東日本大震災からちょうど4年になります。」

その音声に反応して、こたつから這い出してテレビを見た。

テレビでは、東日本大震災の当時の模様や、今現在の被災地の様子、復興の状況などが映し出されている。

 あれは2011年の出来事だ。ちょうど4年ということはやはり今日は2015年。そしてあの忌まわしい震災の起こった311日ということになる。

 4年前。僕にとっては5年前だが当時のことはよく覚えている。僕は小学校6年生で、卒業制作のオブジェの仕上げを6年生全員で体育館でしていた時だった。大きな地震があってみんなで校庭に避難し、そして急遽集団下校をした。それからしばらく流通が麻痺したり、魚の仕入れが困難になったり、計画停電があったりで、うちの店はしばらく閉店する羽目になった。

 そしてその年の夏。中学生になった僕は、震災の影響で観光客が減ったのか、「部屋が空いているから遊びにおいで。」と招かれて夏休みに1人で緑雲荘に遊びに来たのだ。そしてそこで出会ったのが綾さんだった。

 

 今ここでこうして綾さんにお世話になっている事にすごい運命的なものを感じた。いや、それとも猫神様がわざとこうなるようにしたのか…。とにかく今日は2015311日。僕の命の猶予は残り330日。ということだけは改めて明確になった。

 しばらくテレビを眺めながら考え事をしていて体が冷えた僕は、こたつの中に戻ると

 

『子猫+食後+あったかい=強力な眠気』

 

という方程式に抗えず、そのまま眠りに落ちてしまう。

 

「サクラちゃん、ココアくん、そろそろ行くわよ。」

という声とともに綾さんにいきなり寝ているところを抱き上げられて、キャリーケースの中にママと一緒に入れられる。

 そして大変残念なお知らせが。綾さんはすでに部屋着のスエットからバッチリ着替えていた。ラストチャンスを逃し、トホホ。とうなだれる僕を知ってか知らぬか、ママが慰めるように舐めてくれた。

 

 アパートを出ると外はやはりめちゃくちゃ寒かった。大塚産業株式会社札幌支店の看板のある通りを抜けて駐車場に着くと、綾さんは助手席側のドアを開けて僕らのキャリーケースを助手席に固定した。そしてドアを閉めると運転席側に回り、ドアを開け、運転席に座ると

「すぐ温かくなるからね!ちょっと我慢してね!」

と言ってエンジンをかけ、エアコンをマックスにした。そしてドアポケットから何やら取り出すと、一旦外に出て車のガラスをそれでガリガリ擦り始めた。フロントガラスに霜が付いているのだ。さすが北海道。3月でも氷点下らしい。寒いわけだ。

 

 綾さんは車のガラスの霜を取り終えると運転席に戻ってきた。

「準備オーケー!それじゃぁ出発進行!」

カーステの再生ボタンをオンにすると、アクセルと同時にいつものように浜省の曲が車の中に流れた。綾さん浜省好きだなぁ。ちょっと古臭いよなぁ。などと思って最初は聞き流していたのだが、ある曲の歌詞が突然心に突き刺さった。その曲は「家路」というバラードだ。歌詞は大人の事情で載せられないので、要約すると「超疲れてても、すんごく孤独でも、めちゃくちゃ離れてても絶対にあの場所へ帰ってみせる。」というもの。

 うん。大人の事情って大変。

 

 そんなわけで浜省の「家路」に心を打たれて、その歌詞の意味や僕のこれからのことをずっと考えていた。そして導き出した答えは

 

「やっぱ、2月4日までにどうにかして家に帰ろう。」

 

だった。綾さんとずっと一緒にいたいけれど、別れるのはさみしいけれど、もし元に戻れなくてこの命が終わってしまうのならば、最期にはどうしても母ちゃんに会いたい。

 それにもし万が一、元に戻れるのならば、あの日をやり直せるかもしれない。そして人間として、青山創太として綾さんに会いに来ればいい。

 しかしこの雪の残る氷点下の北海道をこの小さい体で旅立つというのは自殺行為かもしれない。良く計画を練って準備しよう。そして出発までにできるだけ大きくなろう。

 

以前同じことを考えていたが、改めてそう決心し、僕の目標は明確になったのだが、そんな矢先に事件が起こる。


次話⇒<第19話


※本作品は小説投稿サイト「小説家になろう」に同時投稿しています。
http://ncode.syosetu.com/n2762de/

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【ライトノベル】吾輩は猫になっちゃった(仮 第11話

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はじめに


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<<第11話>>


 布団に横になってママに温めてもらいながら、僕は混乱した頭を一旦整理することにした。

僕は猫に生まれ変わった。白黒模様の猫に。僕を生んだのはじいちゃんとばあちゃんが飼っていた捨て猫のサクラで、生まれたのはじいちゃんとばあちゃんの家でもある、北海道登別温泉の緑雲荘。そしてここは恐らくじいちゃんとばあちゃんの寝室だ。
 

緑雲荘はじいちゃんが亡くなってから廃業したのだが、ばあちゃんが亡くなってから、母ちゃんの兄である札幌の叔父さんが相続した。蛇口の水を出したりしているのは、叔父さんか誰かがメンテナンスしているのだろう。

また、この緑雲荘は、温泉を配管で壁や床に張り巡らせるせることによって暖房しているので、北海道の真冬でありながらも館内は温かい。きっと、温泉暖房も凍結しないように循環させているのだろう。僕には少し寒く感じるのだが、それは子猫だからなのだろうか。


しかし色々考えていると、ひとつだけひっかかることがあった。

ママが言っていたことだ。

おじいさんは2回前の冬に亡くなって、おばあさんは夏に倒れて運ばれてから帰ってこない。ということだ。

じいちゃんは3年前に亡くなっているし、ばあちゃんはじいちゃんの翌年に搬送先の病院で息を引き取った。
つまりばあちゃんはおととしの夏に亡くなっているはずだ。

すると、ママが言っていることはちょうど1年前のことになる計算だ。


そこで僕は猫神様の言葉を思い出した。

たしか猫神様は、「お前にこれから肉体と試練を授ける。猶予は1年間。」と言っていた。
もしかして、僕はあの事故から1年前に猫として生まれ変わったのか?それなら説明がつくのだが、そうすると、人間の創太と猫の僕が2人、というか1人と1匹だけど同時にこの世に存在するということになる。

魂は一つしかないのにそんなことはあるのだろうか。

まぁそもそも僕が猫に生まれ変わってる時点でもう何があっても驚かないのだけれど。

 

今が何年何月何日なのか。それが気がかりでしょうがなかったが、それを確かめるすべは今のところ無かった。

電気は止まっているようだし、新聞も来ない。この部屋や玄関、ダイニングキッチンにある時計はまちまちの時間を指し示して止まったままだ。

それに北海道の冬は厳しいのでこの体で外に出ることは難しいし、やはり今、僕にできることはとにかく生きて、1日でも早く大きくなることしかない。

こうして僕は、何日か、何週間かわからないけどもママと鬼ごっこをしてたっぷり運動をし、母乳を飲みまくり、そしてとにかく眠った。

子猫ということもあってなのか睡魔の襲撃が半端ない。

母乳を飲んではすぐに眠くなってほぼ1日中寝ていた。
寝る子は育つとは猫にも言えるようで、
姿見でちょくちょくチェックしていたのだが、僕の体は目に見えてどんどん大きくなっていった。

視覚、聴覚、臭覚なども敏感になってきたし、手足も思うように動かせるようになった。

そして歯も生えそろってきた。

ママからグルーミングを教わり、体がかゆくなると、自分でグルーミングもできるようになった。伸びっぱなしで、布団に引っかかってしょうがなかった爪の研ぎ方も教わった。


そんな折、ママが言った

「坊やもそろそろお外に出てみる?」

そして僕はママと二人でようやく外に出ることになる。

ママに咥えられて階段を下り、ダイニングキッチンを横切り、勝手口のキャットスルーの前に着くと、ママが下ろしてくれた。

「お外はちょっと寒いから、少しだけよ。」

と言って、ママはキャットスルーをくぐった。僕も真似して後に続く。

キャットスルーの扉は、上部にバネと蝶番が付いていて、開けても勝手に戻る仕組みになっているのだが、子猫の僕でも簡単に開いた。
 

キャットスルーをくぐると、そこには白い世界が広がっていた。

20センチくらいだろうか、雪が積もっていて、外はとても寒い。

「坊やこっちよ。」

ママの後ろにくっついて行く。

軒下の、地面よりも1段高くなったコンクリートの部分にはちょうど雪がほとんどなく、通路のようになっていた。
そのコンクリートの段の周りを囲むように、温泉の排水が流れる側溝があるので、側溝から内側には雪が積もらないようになっている。
温泉がこの旅館を雪から守っているようだ。

勝手口から旅館の裏手を回ってずっと行くと大浴場と竹の塀で囲った露天風呂がある。
露天風呂の方からは少しだけ湯気が立っているのが見えた。

その横には、物置なのか、温泉用の設備なのかわからないのだが、ちょっとした木造の小屋があった。
側溝のコンクリートの蓋の上を伝って、小屋まで行くと、その裏側の屋根の下でママは立ち止まった。

「ここがおトイレよ。坊やもそろそろ1人で出来るかしら。」

そう、僕はこの時まで、ママの介助でトイレをしていたのだ。

「うん。やってみる。」

これが人間のときならめちゃくちゃ恥ずかしいのだろうけど、猫になった僕には人間のときのようにブラブラした目立つモノがついているわけではないので、恥ずかしくはなかった。

冷たい土に腰を下ろしてしばらくいきんでいると、チョロっとだけ大も小も出た。
「で、出たーっ!」
オバケが出たかのようなリアクションで自力でトイレが出来たことに喜んでいると

「終わったら上に土をかけてなるべく臭いがしないようにしてね。犬や熊が来るから。」
とたしなめられる。

「え!熊…?な、なんですとー!」

猫がトイレをしたら砂をかけるのは見たことがあるが、これは外敵に存在を知らせないためらしい。
こんな小ささで犬や熊なんかに襲われたらひとたまりもない。あ、でも熊は冬眠してるんじゃ…。でも犬も熊も怖かった僕はこれでもか!というくらい念入りに土をかけた。


トイレを学んだ後、側溝の上を歩いて露天風呂を回り込んで、今度は旅館の正面側の軒下を歩いた。
正面側には塀の代わりに背の高い生垣が続いていた。 

そして玄関の前にたどり着いた。なつかしい風景だ。

玄関の先、つまりちょうどダイニングキッチンの前にはちょっとした庭があり、そこに大きな桜の木があった。

「ママはね、この木の下に捨てられていたの。」

「そうなんだ…。」

「それでサクラという名前をおじいさんとおばあさんが付けてくれたのよ。その時のことはほとんど覚えていないのだけれど、桜の花びらが雪のように舞っていたことだけは覚えてる。」

僕はママが段ボール箱に入れられて、親を求めて、助けを求めて必死に泣き叫んでいる様子、桜の花びらが散る様子、それを見つけて駆け寄るじいちゃんとばあちゃんの様子を思い浮かべていた。


桜の木の先には道路に面して、小さな足湯があった。

屋根があって、その下に4人ほどが足湯をしながら座れる背の低い木製のベンチがある。
桜の季節はここで桜を眺めながら足湯が出来るという絶好のお花見スポットだ。 

「どうぞご自由にご利用ください。」

という立て看板が立っている。

足湯には今でもお湯がたっぷりと入っていて、湯気がもうもうと立ち上っていた。

足湯の周りはやはり暖かいのか雪がほとんど無かった。

「こっちへおいで。」

ママについて足湯の方へ行く。

「ここにね、毎朝、毎晩ごはんとお水をくれる人が来るの。」

毎回片づけているのだろうか。そこに餌用や水の器はなかった。

「坊やも歯が生えてきたから、そろそろごはんを食べないとね。ごはんをもらえるといいのだけれど。」


そうか。いつまでも母乳を飲んでるわけにもいかないんだな。
それに、おっぱいを吸っていると、今や生えそろった歯が当たってしまうのか、ママがたまにびくっとして痛がるような時がある。母乳は本当においしいしすごく名残り惜しいのだけど、そろそろ乳離れをしないといけないのかもしれない。

「今日の夜にごあいさつしてみましょうか。」

「うん。」
こうして旅館の外周を一周した
僕たちは、勝手口に戻り、キャットスルーから部屋へと戻った。

そしてこの日の夜。僕は生まれて初めて、というか猫に生まれ変わって初めて人間と出会うことになる。



次話⇒<第12話



※本作品は小説投稿サイト「小説家になろう」に同時投稿しています。
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【ライトノベル】吾輩は猫になっちゃった(仮 第9話

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<<第9話>>


目が覚めたとき、ママはいなかった。

「ママ?」

どこに行ったのだろう。

布団にはまだママの体温が残っていたので、つい今さっきまで隣にいたであろうことがわかる。

「寒い…。」

全身毛に覆われてはいるものの、電気毛布のようなママの体が隣にないと、めちゃくちゃ寒い。よく冬に動物たちが体を寄せ合って寒さを凌ぐシーンをテレビなどで見ることがあるが、その意味が身に染みてわかった。彼らは本能的に寄り添い、温め合っているのだ。

兄弟のいない僕にとって、温め合う仲間がいないというのは致命的なことかもしれない。

「ママ…。どこに行ったのかなぁ。」

光の差し込む隙間の方へ不自由ながらも歩いて行こうとすると、ママがジャンプで飛び込んで来た。

「うおおおおおお!」

一瞬の出来事にびっくりする。

「坊や起きたの?ごめんね、寒かったよね。」

 

ママはいつもの場所に横になる。

良かった。この体では一人では何もできないんだという自覚があったので、正直どうしたら良いのかものすごく不安だったのだ。

「さぁ、おっぱいを飲んで。温めてあげるから。」

おっぱいを飲んでいると、体の中からほんわか暖かくなってくる。

飲み終わると、また暖かい懐に抱き寄せられる。

「ごめんね、寒かったわね。」

「ママ、どこに行ってたの?」

「ごはんを食べて、ちょっとおトイレね。」

「ごはん?」

そうだ、僕はママから母乳をもらっていたが、ママは何を食べていたのだろう。

「そうよ。朝と夜に一度ずつ、ごはんをくれる人がいるの。」

「ごはんをくれる人?」

「そう。人。人間っていう、私たちよりずっと大きくて、頭の良い動物よ。ここも人間の巣なのだけれど、今はもう誰もいないの。」

実は僕もその人間だったんだよ。と言うか悩んだが、ママを驚かせてしまうし、信じてもらえないかもしれない。それに今は言うときではないかもしれないと思ってやめた。
 

「昔はね、人間のやさしいおじいさんとおばあさんが住んでいて、ママと一緒に暮らしていたのよ。けれど、おじいさんが2回前の冬に亡くなって、おばあさんだけになったの。おばあさんは病気だったのだけれど、夏に倒れて、運ばれて、それ以来帰ってこないの。もう天国に行ってしまったのかもしれない。」

ママは寂しそうな顔をして独り言のように言った。涙を流すわけでは無かったが、その目は涙でうるんでいるのがわかる。

「ママ…。」

ママの顔を慰めるように舐める。

「優しい子ね。」

ママに舐め返され、きつく抱きしめられる。

ママの愛情を感じながら、同時に僕は母ちゃんのことを思い出していた。

二人で泣きながら、僕たちはいつの間にか眠っていた。

 

次に目が覚めたときは、昼時なのだろうか。いつもよりも明るく、暖かかった。

僕は寝ているママの懐から抜け出すと、押入れの隙間までたどたどしい足取りで歩いて行った。

隙間から室内を見ると、畳と古びた2棹の箪笥だけの和室がそこにあった。

カーテンは閉まり切っていなかったので、そこから外の光が差し込んでくる。
 

和室は6畳くらいの部屋だと思うが僕には体育館くらいの広さに感じる。そして今立っている押入れの2段目から床までの高さは10メートルくらいある感覚だ。

「やっぱここから落ちたら死ぬかもな…。」

と思っていると

「坊や、起きたの?ちょっとだけお外に行ってみましょうか。」

と背後からママの声が聞こえた。

と同時に後ろから首根っこをママに咥えられて釣り上げられた。
なぜか全く痛みがないのだが、そこを咥えられると力が抜けて動けなくなる。


「あ、あれ…。動けない…。」
と思ったのもつかの間、視界が押入れの2段目から一気に10メートル下の畳へ。

「うわあああああああああ!!」

まさにバンジージャンプ。床スレスレのところで、視界が止まると、やさしく降ろされる。
心の準備もなくいきなり落下したのでちびりそうだった。
 

畳の床は、手のひら足のひら、というか肉球というのが敏感なのか、ひんやりとしていた。
床からの眺めはまた違って、先ほど見ていた箪笥はまるでちょっとしたビルのようだ。

「俺すげー小っちゃくなっちゃったな…。」

そう思いながらも部屋の中を歩いてみる。
すると、今まで暗くてわからなかったのだが、箪笥の向かいに少し埃をかぶった姿見があった。

自分の姿を確かめてみたくて、僕は姿見の前まで歩いていく。

そして僕はとっても小さな小動物に生まれ変わった自分を再確認した。

 

体は全体的に黒くて、手先、足先、しっぽの先、喉からお腹が白。そして僕の顔は耳や目の周りは黒いのだが、おでこのあたりから頬っぺた、あごの下にかけて三角形というかハの字型に白くなっている。ちょうど、色白の人間が髪を真ん中分けしているかのような模様だ。昔こういう顔のキャラクターが書いてある風船ガムを良く買って食べていたのでそれをちょっと思い出していた。

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「しっかし、こうしてみると、自分で言うのもなんだけど、子猫ってのもけっこう可愛いなぁ。」

僕が姿見の前で、360°回転したり、色んなポーズをしてみたり、自分のお尻の穴を見てみたりしているとママが後ろから声をかけてきた。

「坊や、あなたとってもキュートよ。」

なんかこれ、洋服屋さんの試着室みたいだな。
 

「さぁ、じゃぁほかのところにも行ってみるかしら?」

と再びママに首根っこを咥えられてこの後、人間の巣を探検することになるのだが、そこで僕は驚くべき真実を知ることになる。



次話⇒<第10話



※本作品は小説投稿サイト「小説家になろう」に同時投稿しています。
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