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うん。なるほど、まぁこんな凄いトリックが使えるなんて「マジック界の神」と呼ばれても過言ではないよな。などと思っていると
「ちがうよ、マジック界の神とかじゃなくって、本物の神様だよ!猫の姿してるけど!こういう神様もいるの!わかる?」
「は、はぁ。」
僕が今、心で思ったことを見通したので、唖然とした。
確かに、このデカい猫はどう見ても作り物に見えない。
でも、猫が神様?神様と言えば、禿げてて髭が長くて白い服着てて杖をついた仙人みたいな感じだよな。とぼんやり考えていると
「お前さ、今、禿げてて髭が長くて白い服着てて杖持ってる仙人みたいのイメージしただろ!神様ってああいうのもいるけどそれだけじゃないから!」
思ったことをズバズバ言い当てられる。
「白い動物ってね、神様の場合が多いんだよ。お前知らないかもしれないけど。白い蛇とかね、白いキツネとかね、白い象とかね、あれだいたい神様だから。」
「そうなんすか…。」
もう、この際なので、神様と認めて説明を聞くことにした。
「でさ、私が神様ね。で、あそこにいるのはお前の亡くなったおじいさんとおばあさんとお父さんだよ。」
「ええええええええええええ!」
びっくりして振り返って3人を見る。やはり本物だったか。超似てるわけだ。
「お前のことを迎えに来てるの!」
「なんですとー!」
うーん。なるほどなるほど。飲み込めて来たぞ。どうやらこれは最悪の状況だ。ヤバいぞ、創ちゃん大ピーンチ!
しかしそんな僕の焦りを無視して猫神様は質問してきた。
「ということは?あの川は?一体何でしょう!」
こんな状況でそんなことをクイズに出すか!デリカシーのない神様だなぁ。と思いつつも、僕は勇気を振り絞ってクイズに答えた。
「ピンポーン!」
「はい、青山創太さん。答えは?」
「多摩川!」
「んなわけあるかーい!」
でっかい肉球で頭を叩かれた。猫神様のツッコミ猫パンチは相当痛い。
「イテテテテ。…三途の川。ってわけですね?」
「そうだ。あれが三途の川だ。」
そうか。今まで全く記憶が無かったのだが、だんだん思い出してきた。
僕は淳平と光一とヤマジョ3人とカラオケに行って、優希ちゃんにLINEのIDをもらって、母ちゃんが心配になって急いで帰ろうとして、自転車でコケて、そしてトラックに轢かれたんだ…。
「はい。ということで青山創太の人生はこれにて終了!とっとと渡れ。」
「ええええええ!嫌ですよ!僕は水もボートも怖いし、そもそも死にたくないんで。
だって母ちゃんが心配だし、彼女だってできそうだし、やりたいことがいっぱいあるし。それに僕まだ16歳ですよ?もっと生きたいですよ!」
しかし同時に他のことも思い出していた。確か、テレビのオカルト番組で見た臨死体験がテーマの特集だった。生死の境をさまよった人たちが見た光景。川の向こうで死んだ親しい人たちが手を振ったり手招きしていて、川を渡るのを拒否したり、来た道を戻って行ったら、蘇生した。という内容だ。
「つかぬことをお伺いしますが、神様。そういえば三途の川を渡らずに、ここから戻って生還する人っていますよね…。」
猫神様がギクッ!とした顔を一瞬した。しめた!
「フフフ。どうやら図星のようですね…。なら僕、やっぱ戻りますね。」
と言って立ち上がると
「待て!んー。バレたらしょうがない。けどね、お前今このまま戻っても体ぐちゃぐちゃだし、あの体だと全然魂磨けないからね。」
「え?ぐちゃぐちゃ?え?マジっすか!え?で、何ですか?魂磨く?」
「そうだ。まぁ、しょうがないからお前にチャンスをやろう。その前に大事な話するから座れ。」
「はい!」
ぐちゃぐちゃというのが正直ショックでテンパったが、なんとかなるかも。と思いつつ座りなおす。
「お前さぁ、目上の人がチャンスをやる、大事な話をするって言ってんのに、あぐらかく馬鹿がどこにいるんだよー!」
「あ、すいません!」
僕は正座して聞くことにした。
「じゃあな、まず。生き物はなぜ生まれてくるのかわかるか?」
「そりゃぁ、あの…。あれですよ。セッ…。」
「ちがーう!」
またでっかい肉球で頭をはたかれた。今度は身構える前にかぶせ気味にツッコミを入れられたので、首にきた。
「そういう意味じゃなくて!生まれてくる理由!なぜ命を授かるのか?っていうこと!」
首を左右に動かして、頸椎を直しながら、この神様クイズ好きだなー。と思っているとまた見透かされる。
「クイズが好きとかじゃなくって、お前に考えてもらいたいの!」
「はぁ。そうですね。なんで命を授かるのか。かぁ…。種の保存とか?」
「うむ。そういう一面もある。でもそれは本質じゃない。って、もういいや、お前馬鹿だから正解言っちゃうよ?いい?」
猫神様が正直面倒くさくなってきてるのがわかったが、ここは試験に出そうなので真面目に聞こう。
「はい。お願いします。」
「命ってのはな、魂を磨くために授かるんだよ。」
「魂を磨くために…。」
「魂と肉体は別のものだ。肉体は魂を入れる器のようなもの。魂が肉体に宿る時。それが命のはじまり。誕生だ。そして魂が肉体から抜け出るとき。それが命の終わり。つまり死だ。今、お前の肉体からは魂が抜けている。まぁほとんど死んでる状況だな。」
「は、はい…。」
「でもな、肉体は死んでも、命が終わっても、魂は永遠に生き続ける。そしてあるときその魂がまた新たな肉体に宿るんだ。」
「なるほど、輪廻転生ってやつですね?聞いたことあります。」
「生き物にはな、それぞれ使命があって、その使命を全うしたり、与えられた試練を乗り超えたり、善い行いをしたりすると魂が磨かれていくんだ。そしてその魂をもっと磨くために順番が来ると新しい使命を与えられ、新しい肉体に宿る。魂にはステージがあって、磨かれれば磨かれるほど、高いランクの魂となってゆく。そこでより困難な使命を与えられたりするんだな。つまり、生きるということは魂を磨く修行ということだ。」
「なるほど…。ちなみに僕の魂はあんまり磨かれてない。ですよね。」
今までの人生16年を振り返ってみると、人の役に立ったことも無いし、試練という試練などほとんどなかった。しかも僕に使命?なんてあったのか…。
「だな。お前は今のところこの人生で全くと言って良いほど魂を磨いていない!」
「ですよねー。」
「まぁ、色々な経験をしたり、楽しんだり、苦しんだり、悲しい思いをしたりしても多少は磨かれるんだけどもな。それにしてもお前は全然ダメだ。ゲームばっかりやってるしな。平均点以下。って言うか、もはや赤点だよ。そこで、だ。お前にこれからある肉体と試練を授ける。猶予は1年間。お前はそこで魂を磨きまくれ。結果次第では、上に話を通してやる。」
「え?神様より上の方がいらっしゃるんですか?」
「まぁ神様ってのもいろいろいるし、力の度合いとか能力とかも違うからな。」
「へぇ。」
「それじゃ、行ってこい!」
「え、あ、あのちょっと質問が…」
「ドーン!」
質問しようとしたが、質問を遮るように猫神様は僕の頭にタッチした。
それ以上しゃべっても声が出なかった。体がどんどん消えて行く…。そして視界が真っ白になった。
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※本作品は小説投稿サイト「小説家になろう」に同時投稿しています。
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