<<これまでのお話>>

はじめに


第1話



<<第2話>>


 さっきの事故のおかげでいつも引っかからないはずの信号にも引っかかり、相当飛ばしたのにも関わらず本当にギリギリの時間。
ようやく校門が見えてくる。

 

数十名くらいの生徒たちが走ったり、自転車で吸い込まれるように突っ込んでいく。

掃除機に吸い込まれるゴミみたいだな。あ。俺もゴミか。などと思った矢先チャイムが鳴る。

8時30分。

チャイムと同時に生徒会の生徒が鉄の校門をガラガラと締め始める。
 

漫画に描いたような竹刀を持った体育教師が、校門の前で地面を竹刀でパンパン!と叩きながら行ったり来たりしているのが見える。

やべっ、赤鬼だ。
いつも赤いジャージを着ていて、さらに真っ赤な顔で怒るので生徒たちから陰でそう呼ばれ、恐れられている。

校門が締まりきるまでに入れればセーフなのだが、締まりきるまであと15秒はありそうだ。

ギリ間に合う!


自転車のペダルがもうこれ以上回らないというくらいの高回転で僕は自転車をこぎ、ラストスパートをかける。

間に合った!スピードをゆるめながら赤鬼に

「おはようございます!」

と言って僕は閉まりかけた大きな鉄の校門の隙間めがけて自転車を滑り込ませようとするが、その先を竹刀がふさぐ。

「はい遅刻。」

「え?いや、あのまだ閉まってないですよね。」

と言いかけるも、上からかぶせるように

「チャイムが鳴ったらその時点で遅刻なんだよ!」

「はぁ…。」

口ごたえすると余計状況が悪化しそうなので、ここは大人しくしておこう。はい遅刻確定。やっぱり占いは当たっている。

「クラスと名前!」

と赤鬼は脇に挟んでいた遅刻者リストを取り出して、首からぶら下がったボールペンを手に持ち、カチッと鳴らした。

「2年F組の青山創太です。」

赤鬼が僕の名前を書いていると、ここはトライアスロンの乗り継ぎ地点かゴールか何かですか?と言わんばかりに息咳切らした生徒たちが次々と自転車やら全力疾走で僕のうしろにやってくる。

「お前常習者だな。このままだとそろそろ生活指導あるからな。はい、行って良し。次!」

 

教室に行くと、みんなホームルームの前の雑談で騒がしい。

先ほどの事故で打ったお尻をさすりながら席に向かおうとするも、後ろからそのお尻を蹴られる。

「よっ!創太!」

振り向くとそこには肩を組んでニヤニヤした光一と淳平がいた。

こいつらとはクラスは違うものの、中学のときからずっとつるんで。いわば悪友だ。

「いてえな!朝から何だよ!」

「創太!お前、今日さ、暇?」

光一が周りを見回しながら言う。

「今日さ雪降るんだぜ、早く帰って家でゲームでもするよ。」

すると淳平が芝居がかった感じで天井を見上げながら

「はぁ。そっかぁ。残念だなぁ。今日はヤマジョとカラオケ。なんだけどなぁ。」

などと言うもんだから、

「何っ!ヤマジョと!」

とつい大きな声を出してしまった。


説明しよう。ヤマジョとは隣駅にあるお嬢様学校で、タータンチェックのミニスカートと白いセーターの制服がとっても可愛い女子高なのだ!その上、女の子のレベルがかなり高い。そんなわけで東京中の男子高校生あこがれの的なのである。


二人は人差し指を立ててシーッ!と言いながら僕を隔離するように教室の隅のゴミ箱のところまで連れて行き

「どうするの?創ちゃん?行くの?行かないの?」

と小声で迫った。

「そ、そうだな。せ、せっかくだしな。お前らの誘いを断るなんて、友達じゃないよな。」
「よっしゃー!メンツは決まりだ!じゃあ創太、4時にニコタマのマックな!」

と手を振りながら光一と淳平は廊下へ消えて行った。
僕はそれを見送ると、数秒ほどして我に返った。 

よっしゃー!キター!マジかー!ヤマジョかー!

僕は思わずガッツポーズをしていた。

 

授業には全くと言っていいほど身が入らなかった。まぁいつも授業に身なんて入ってないんだけども、特別身が入らなかった。

ヤマジョ。ヤマジョ。ヤマジョ。ヤマジョ。
気が付くと、ノートの見開き1面に「ヤマジョ」と書いていた。ヤマジョの4文字は相当上手くなったはずだ。
あの制服可愛いよなぁ。しかしどこのネットワークでヤマジョなんかと繋がったんだ?どんな子が来るんだろうなぁ。などと考えていたら学校の1日などあっという間に終わった。朝の出来事などつい先ほどのことのように思える。

 

3時過ぎに授業を終え、僕は1人自転車でニコタマに向かった。光一と淳平はともに午後の授業をさぼって昼休みの時点ではすでにいなかったからだ。


ニコタマのマックまでは学校から自転車で15分ほど。

マックに着いて、コーラとポテトを頼んで、ちょっと早かったかな。と思いながら2階に行くと、奥のテーブル席にすでに光一と淳平がいた。朝と変わらずニヤニヤしながらこっちに手を振っている。


席に着くと

「創ちゃーん、早いじゃなーい。」

女口調で淳平がおどけて見せる。

時計を見ると、まだ4時15分前だった。

「お前らこそ早いだろ。」

実は3人ともいてもたってもいられなかったというのが本当のところだろう。

「それよりもさ、作戦会議しようぜ。」

淳平が少し小声で内緒話するようにテーブルに乗り出す。

待ち合わせは4時半にニコタマの改札口らしい。あと45分を有意義に使わなくては。

 

僕らはまず誰がどの女の子を攻めるのか話し合った。

最優先権は今回の幹事の淳平。淳平の姉貴の友達の妹ってのがヤマジョの幹事の朋ちゃんと言う子らしい。持つべきものは姉だ。
淳平はすでに朋ちゃんがお気に入りらしいのでそこは譲り、あとは光一と僕が残る二人をどうするかが最大の問題だと思ったのだが、話は意外とスムースに決まった。実はすでに淳平が僕ら3人と、ヤマジョ3人の写真をスマホで交換していたからだ。

「じゃーん!今日会うヤマジョの3人でーす。真ん中の朋ちゃんは俺が行くからね。」

淳平が取り出したスマホにはヤマジョの3人の写真が映し出されていた。

写真はプリクラをスマホで撮影したもので、みんな目がパッチリに顔が補整されてるものだから、どの子も可愛く写っている。しかもご丁寧に全員の名前入りだ。

「おおおおおおおおおおお。」
「か、かわええ…。」
と見入っていると、淳平が提案した。
「じゃあ、いっせいのせ。で行きたい方を指させよ。かぶったらじゃんけんな。」
ということでいっせいのせ。で光一と僕は女の子を指さした。 

おっぱい星人の光一は左にいるロングヘア―で、おっぱいも大きそうな成海ちゃんを指したが、幸い僕は右にいるのショートカットで小柄で、色白の優希ちゃんを指したので光一とかぶることなく無事にそれぞれのターゲットが決まった。

 

そしてネタの曲目や曲順を決め、さらにルールや何かあった場合の秘密の合図を決めた。

うまくいかない場合の緊急時の案として「ジュースをこぼしてそれを処理している間に二人っきりにさせる作戦」や、「具合が悪くなったフリして介抱してもらう作戦」まで色々と考えた。


そんなこんなで、ああじゃないこうじゃないと作戦会議をしていると、4時半前に淳平のスマホが鳴った。

「きた!」

3人で顔を見合わせる。

「もしもし。朋ちゃん?もう着いた?うん。うん。じゃぁ今からそっち行くよ。こっちも揃ってるから。うん。」

と言って淳平がスマホを切ると

「決戦の時は来た。猿よ、光秀よ、いざ参るぞ!」

と僕と光一を交互に見ながら言って立ち上がった。

「なんで俺が猿なんだよ。猿って豊臣秀吉だっけ?」

「おれは明智光秀かよ!って言うかお前は信長か?今晩焼き討ちにしてくれるわ!」

などとツッコミを入れつつ、僕らはマックを出て寒さだか緊張だかで震える足をロボットのように無理やり動かしてニコタマの改札口へ向かった。



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※本作品は小説投稿サイト「小説家になろう」に同時投稿しています。
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